理系彼女と文系彼氏(旧)
「うわー。大混雑」

食べてすぐに来たと言うのに、体育館はすでに人で一杯だった。

少し周りの会話に耳をすませてみると。

「月見里君が出るんでしょ?チョー楽しみーっ」

「文君、早く来ないかなー」

…………恐るべし月見里君の人気。

「月見里は相変わらずモテてるわねー。本当に見れるのかしら?」

菜穂の言葉にこくこくと頷く。

菜穂の身長ならともかく私の身長じゃきっと見れない。

そういえば。

「藤堂先輩は?」

「ああ、蓮はバスケの審判。特等席用意するって言ってたけど」

ちょうどそのタイミングで菜穂のケータイの着メロ。

「お、蓮から。こっちだって」

菜穂に引っ張られてついた場所は。

「すご」

体育倉庫の二階。

本部席なので一般生徒は入っちゃ駄目なんだけど。

「俺が会長に掛け合って用意してもらった。秘密だぜ?だって」

菜穂がやったら上手い藤堂先輩の物真似で答える。

秘密だから大きな声は出せないけど、月見里君のプレーを見るにはいい場所。

「これより、体育館で男子バスケットボールの試合を開始します」

アナウンスが流れてユニフォーム姿の月見里君たちが出てくる。

やば。

迂闊にも、一瞬カッコいいって思った。
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