理系彼女と文系彼氏(旧)
「文系三年だよ」

ふんわり、と微笑んで言う。

文系三年、か。

私が手加減したせいじゃないといいんだけど。

「そうですか。文理はどっちでした?」

「理系。あーあ、負けちゃった。僕、結構頑張ったのになぁ」

よかった。

これで負けちゃってたらさすがにクラスの人に顔向けできない。

「武道大会もあるんだからいいじゃないですか。そこでも、理系の勝ちを譲る気はありませんけどね」

この学校は体育祭が無い代わりに夏の球技大会、冬の武道大会がある。

どっちにしろ運動が苦手な私には関係がないっちゃ無いんだけど。

「うわ、理恵ちゃんって実は負けず嫌い?でもなー、僕スポーツはバスケ以外はあんまり得意じゃないしな」

バスケ、といえば。

「話、ってなんなんですか?」

そんな約束をしていたような。

でも、聞いたのは間違いだったのかな?

明らかに月見里君の顔が強張った。

「あ、すみません。いいです、気にしてないです」

私が慌てて発言を撤回するとやっぱり手遅れだった。

少し憂いを含んだ顔で月見里君がんーんと首を振って儚く微笑んだ。

「いいんだ、話すよ。理恵ちゃんが振ってこないからって黙ってたのは僕の甘えだから、ね」

ずき、と胸が痛んだ。

月見里君の悲しそうな顔は見たくない。
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