理系彼女と文系彼氏(旧)
なんでだろう。

そんなこと、思ったことなんかなかったはずなのに。

「えっとね。あー、もう。場所、変えてもいい?僕の、家とか、さ」

いつもはきはき話す月見里君にしては珍しく歯切れの悪い言い方。

目はきょろきょろとあちこちを見て落ち着かない。

「あの、構わないんですけど。無理、しないでくださいね?」

私が声をかけたとたんに月見里君の表情が崩れる。

くしゃり、と。

それでも彼は綺麗。

「ありがと。でも、甘やかさないで。話す、って決めたんだ」

「なら、いいんですけど」

月見里君の家。

広いなぁ。

って、何さらっと男子の家に来ちゃってんだろう。

付き合ってもないのに。

「あの、お家の人は、いらっしゃるのですか?」

二人きりはさすがに遠慮したい。

「大丈夫。姉貴と母さんがいるから」

なら、いいや。

っていいのかな?

ああ、自分が冷静じゃないのがわかる。

どうしたんだろう、私らしくもない。

「僕の部屋、で大丈夫?」

月見里君が気を遣ってくれているのがわかった。

何回も私に確認をとっている。
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