理系彼女と文系彼氏(旧)
はは。

無駄な夢、見ちゃったなぁ。

私が、こんなんでも恋が出来るなんて。

バカな夢。

「理恵ちゃん。大丈夫?」

「……大丈夫です。でも今日は帰らせてもらいます」

私がそう言っても月見里くんは動かない。

私の服の裾を掴んだまま。

離して、くれない。

「あの、月見里、君?」

ずっと伏せたままの月見里君の顔。

それが、あがった。

「ごめん。でも、誤解してほしくないから、話聞いて?」

一回も見たことない、月見里君の泣きそうに真剣な顔。

こんな風にお願いされて断れるほど私は冷たくない。

「はい、聞きますから。泣かないでください」

「えっ、……僕、泣いてる?」

私の言葉に頬を染めてごしごしと目をこする月見里君。

「ごめんね。そいつ、うん。写真の子なんだけど」

そいつ、か。

ずいぶんと親しげ。

「僕の、彼女だったんだ。バスケ部のマネージャーだった」

やっぱり。

私なんか、月見里君には必要ない。

「でも、みゆ……中島 美優(なかじま みゆう)はもう。この世に居ないんだ」
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