理系彼女と文系彼氏(旧)
菜穂と藤堂先輩
「で、何の用ですか?」

予想はつくけれど。

「理恵ちゃん、僕と付き合ってくれる?」

予想通り。

何で諦めないかな、この人は。

「嫌です。月見里君、しつこいですよ。もう止めてください」

いつもより厳しめに断ると傷付いた顔になる。

少しだけ罪悪感。

「ねえ、理恵ちゃん。僕さ、断る理由を聞いたことないんだけど」

眉を下げたまま、じりじりと月見里君が近付いてくる。

嫌な予感がして後ろに下がるとすぐに壁。

「教えてくれる?理恵ちゃん」

顔の横に手をつかれて動けない。

二人の身長差は15㎝。

「………………15㎝差がキスしやすい身長」

つい口に出してしまえばにやり、と肉食獣の笑み。

反省。

思ったことをすぐに口に出さないようにしよう。

口は災いの元。

手遅れだけど。

「実戦、してみる?」

くす、と小さな笑い声の後に唇が落ちてくる。

付き合ってないのにキス。

嫌なのに。

甘くて、優しくて、嫌なのに。

好きになってしまいそうで、嫌なのに。

顔の横にあった手は無くなっていて逃げようとすれば逃げられる。

でも、逃げられない。

ぬるり、と入ってきた舌を押し返そうとしても逆効果。

絡めとられて腰が崩れる。

どうしよう。

胸が、苦しい。
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