ポケットダーリン
ズズ‥鼻を啜っていると、眠たそうに片目を瞑る叶人がムクリと起きてきた。
「どした?」
後ろから抱きしめながら、よしよしとあたしの頭を撫でる。
「なんでもない、おやすみ」
そう言って立ち上がった。
寝かせてあげたかった。
叶人が悪いわけじゃない。
頑張っているのも解ってる。尊敬もしてる。
自分の中でもやもやしているだけだ。
「なんでもなくないじゃん、泣いてんじゃん。
辛いことあるなら俺にも教えてよ。…ゆうりだけが辛いのは、俺は嫌だ」
繋ぎ止められた叶人の右手から、体温が伝わってくる。
あたしは静かに頬を濡らした。