ポケットダーリン

都合の良い女


「ミアさん、お疲れ様でした」

ドライバーから今日の給料を受け取る。

隣に置かれた鞄から、携帯の振動が伝わる。

画面には「叶人」の文字。

分かりきっていた。


「…はい」

重い声で電話に出た。

昨日の今日で、仲直りはしていない。


「仕事終わった?」

「…終わった」

「ちゃんと話したいから今から店来れる?
別に帰ってからでもいいけどたぶんベロベロだしさ、今ならまだ酒入ってないから…」


店に来るよう仕向けることも分かっている。

だって今日はイベントの日。


「今から行く」


気付かぬフリして、騙されてあげるの。

…都合の良い女は好かれるもの。

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