ポケットダーリン

重厚な扉を開けると、賑やかな音が耳を貫く。

「ゆうりちゃん、いらっしゃい!
叶人呼んでくるからちょっと待ってて」

そう言われ、入口で待っていると不意に扉が開いた。

「やぁだも~ユキってばぁ」

男の腕に絡みつくその女を、店で何度か見掛けたことがあった。

ナンバーワン、ユキのエースで、イベントや締め日には必ず顔を出す常連だ。

遣う金額はいつも桁外れで、今日も勝ち目が無いと、試合前から既に負けを悟ってしまった。



浅く溜め息を吐くと、視界に叶人が映った。

店内に入るよう促され、叶人の後に続く。

「いらっしゃいませー!!」

威勢のいい声が店内に響く。

黒いソファーに腰を落ち着けた。

< 18 / 33 >

この作品をシェア

pagetop