ポケットダーリン
なかなか良いの無いな~…
そう頭の中で呟きながら、どんどんスクロールさせていく。
「あっ、」
うっかり、どうでもいいアプリをタップしてしまったようだ。
手のスピードに追いつかなかった画像が、徐々にその姿を現していく。
「ポケットダーリン…」
画面には、とても美しい顔をした男の子が微笑んでいた。
大好きな人に微笑むようなその笑顔に、あたしは一瞬見とれてしまっていた。
…な、なんだ、ただの恋愛シュミレーションゲームか。
いわゆる乙女ゲーってやつね。
興味無い、って言ったら嘘になるけど、こんなのやってるって知られたら恥ずかしくて生きていけない!
却下 却下!
「あ~…マジ吐きそう…」
帰ってきた叶人の気配に驚いて、慌てて画面を閉じる。
「おかえりっ」
はい、とオレンジジュースを差し出す。
それを受け取ると、叶人はゆっくりと口に含んだ。
そんな姿を見ながら、まだドキドキと心臓は脈打っていた。