おかしな国のアリス
スプーンって、壁に刺さるの…?
恐るべき腕力。
私は、帽子屋さんには逆らっちゃいけないな…と、そのスプーンを見て思った。
「うーんうーん、よくきこえなかったな、よくきこえなかったな、アリス。」
…すごく恐ろしい。
白兎の眼の訴えもあるし、私ももう、逆らう気はないから、言い直し。
「紅茶が好きです!」

とりあえず、帽子屋さんの機嫌はなおったみたい。
三人で、ケーキと紅茶を味わう。
…あ、おいしい…
…じゃなくて。
兎が帽子屋さんに会いたくないって気持ち、すごくよくわかった。
…うん…もうかかわりあいたくないかも…

その時。
扉を叩く音がした。
すると帽子屋さんが急に、持っていたフォークを振りかぶり。
投げた。

ビュッ!!

ダンッ!

「………」
「………」
私と兎の、ケーキを食べる手が止まった。
「あ…ごめんねごめんね、これ、癖なんだ…癖なんだ…」
お茶会中なのにね、びっくりしたよね、と、二度繰り返しつつ言った。
「開けてください」
「開けてください」
同じ声が二つ聞こえた。
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