おかしな国のアリス
帽子屋さんによると、猫は水が嫌いで、動くものが好きらしく。
だから水があるところには近付かず、動くものを追っていってしまうからどこにいるか分からないらしい。
――水が嫌いっていうのは別に教えてくれなくてもいい気がするけど――
帽子屋さんと双子に手を振って、私たちはやっと猫捜しを再開した。
「…といっても…」
これじゃあ、ほとんど情報がないのと同じだ。
「困りましたね…」
顔に絆創膏を張った白兎が言って、二人してうーんとうねっていると
「すみません」
後ろから、低すぎず高すぎない青年のような声。
はい?と兎と私が振り向く。
「道をお尋ねしたいのですが…よろしいですか?」
スーツ姿。
その胸ポケットにはサングラスがかけてある。
長い金髪を低く結った男性。にこにこと笑顔をはりつけている。
――なんか、怖い。
「…道…道なら」
こっちに、と白兎を指さそうとしたが
「…女王の奴隷がなんの用です。」
その冷たい声で遮られた。
こんな冷たい声の兎は初めてだ。
「おや…これはこれは、白兎。」
意外そうな顔をするスーツの男性。
兎がその顔を軽く睨む。
「…そんな怖い顔をしないでください。別に取って食おうなんて思っちゃいませんよ。」
くす、と笑って目を開く。
その瞳は、白く濁った青色だった。
「ですが…先ほどの発言は改めてほしいですね…奴隷だなんて。」
男性は、焦点の合わない目で兎を見る。
「ああ…うっかりしてました、すみません…訂正しますよ、
…女王の犬」
空気が温度を失っていく。
赤い兎の目と、濁った青い目が交わる。――それでも少しずれているが――
そらしたのは男性だった。
男性は肩をすくめ、
「君と話していても埒が明かない。僕はただ、道を聞きたいだけなんだよ。」
また笑顔になる。
兎も嘲笑を浮かべ
「どうせ猫を探しているのでしょう?」
男性の唇がぴくりと動く。
「…兎の耳をなめないでください。
あなた方のことだ、私たちを道に迷わせて、先に猫を捕まえる…そうお考えなのでしょう?」
分かりやすく幼稚な手だ。兎が言った。
男性は、胸ポケットのサングラスをかけ、
「…相変わらず嫌な性格ですね…白兎」
怪しげに笑った。
だから水があるところには近付かず、動くものを追っていってしまうからどこにいるか分からないらしい。
――水が嫌いっていうのは別に教えてくれなくてもいい気がするけど――
帽子屋さんと双子に手を振って、私たちはやっと猫捜しを再開した。
「…といっても…」
これじゃあ、ほとんど情報がないのと同じだ。
「困りましたね…」
顔に絆創膏を張った白兎が言って、二人してうーんとうねっていると
「すみません」
後ろから、低すぎず高すぎない青年のような声。
はい?と兎と私が振り向く。
「道をお尋ねしたいのですが…よろしいですか?」
スーツ姿。
その胸ポケットにはサングラスがかけてある。
長い金髪を低く結った男性。にこにこと笑顔をはりつけている。
――なんか、怖い。
「…道…道なら」
こっちに、と白兎を指さそうとしたが
「…女王の奴隷がなんの用です。」
その冷たい声で遮られた。
こんな冷たい声の兎は初めてだ。
「おや…これはこれは、白兎。」
意外そうな顔をするスーツの男性。
兎がその顔を軽く睨む。
「…そんな怖い顔をしないでください。別に取って食おうなんて思っちゃいませんよ。」
くす、と笑って目を開く。
その瞳は、白く濁った青色だった。
「ですが…先ほどの発言は改めてほしいですね…奴隷だなんて。」
男性は、焦点の合わない目で兎を見る。
「ああ…うっかりしてました、すみません…訂正しますよ、
…女王の犬」
空気が温度を失っていく。
赤い兎の目と、濁った青い目が交わる。――それでも少しずれているが――
そらしたのは男性だった。
男性は肩をすくめ、
「君と話していても埒が明かない。僕はただ、道を聞きたいだけなんだよ。」
また笑顔になる。
兎も嘲笑を浮かべ
「どうせ猫を探しているのでしょう?」
男性の唇がぴくりと動く。
「…兎の耳をなめないでください。
あなた方のことだ、私たちを道に迷わせて、先に猫を捕まえる…そうお考えなのでしょう?」
分かりやすく幼稚な手だ。兎が言った。
男性は、胸ポケットのサングラスをかけ、
「…相変わらず嫌な性格ですね…白兎」
怪しげに笑った。