おかしな国のアリス
「やあやあ、白兎」
ばれちったかー、とか、小鳥と戯れながらにこにこ。
彼…三月うさぎさんは、素肌に黒くて長いコートというキテレツな格好で現れた。
頭に葉っぱがついてる。
目の色が片方ずつ違う色で、こっちから見て右が金、左が赤。

「こちら、アリスさん?」
「あ…はい、私アリスです。」
ああ、そうか猫が居ないからね、大変だねと一人でぶつぶつとつぶやいている。
「…ねぇ、白兎」
「なんでしょう?」
「あの…三月うさぎさんは今日誕生日?」
私の問いにきょとんとする白兎。
「彼の誕生日はもう終わりましたよ。」
「だ…だって、普通だから…」
三月うさぎはすごく騒がしいって、お母さんから聞いたのに。
「これも時のせいですよ。彼のもう一代前の三月うさぎはすごかったみたいです。」
手も付けられないくらい。そう言ってから、
「そうです、三月うさぎ。」
「なんだい?」
つぶやくのをやめ、三月うさぎは大袈裟にふりむく。
「猫を見ませんでしたか?」
「?…猫…チェシャ猫かぁ。」
ううむ、ってうなって、それならと南を指さし
「あそこの森で会ったよ?」
「え!?本当!?」
私は身を乗り出した。
「んー…まぁ…入っていくのを見ただけだけど。」
それだけでもすごい情報だ!
よかった!やっと猫に会える!
喜んでいると、兎が真剣な顔をして
「南の森ですか…」
つぶやいた。
「え?…何かあるの?」
「…ええ…」
兎は顎に指をあて、険しそうに話し始める。
「あの森を越えたところに、女王の城があるんですよ。」
…女王…って、ハートの女王?
ってことは…
「さっき出会ったトランプ兵に、また何をされるか解りませんし…猫も、もう捕まっているかもしれない」
「え…」
「そうだね…何度かうちにトランプ兵が尋ねてきたよ。
だからまだうろうろしてるかも。」
三月うさぎも真剣な顔をして言った。
「そんな…」
…でも女王がどうして猫を捕まえたがるのかな…?
「女王様は」
三月うさぎが、私の心を読んだかのように話しだした。
「猫をアリスから奪って、物語を始めさせないつもりなんだ。」
「ど…どうして?」
私の問いに、今度は白兎が答える。
「女王は、この国共々消えたいんでしょう…」
< 23 / 60 >

この作品をシェア

pagetop