おかしな国のアリス
中もやっぱりだだっ広くて。
大きなシャンデリアが天井にたくさんかかって中を美しく照らし…
…ていなかった。
広いし、シャンデリアは確かにあるけど、明かりはついていない。
真っ暗で、人気がしない。
この大広間にはたくさんの扉があり、その中にひとつだけ、開いているものがあった。
中からは光が漏れている。
「…」
「…」
私はそこに誘われるように入ってはいない。
いや…だってどう考えても罠だし…
入った瞬間にトランプ兵がわっと出てきてはいおしまい!…なんてことになったら…
「って…こらチェシャ猫!」
「ぅわっ!…んだよアリス…」
「なんだよじゃないわよ!…なに勝手に入ろうとしてるの?」
敵の策略にまんまとハマるところだった!
しかも私の意思に反して!
「いや…ヒトの気配も匂いもしなかったから、いいかなと思ってよ…」
「…。あなたの鼻はどこまできくの?」
「半径1kmくらい」
…あっそう…

そんな猫の鼻を信じて――前例もあるし――
私たちは部屋に入った。
「…誰もいない…」
本当に誰もいない。
っていうか、ここは本当にお城?
旧じゃない?
「ん、アリス。」
「どうかした?」
「ヒトの匂いだ。
…近い」
「!やっぱり罠だったんだよ!なんかセンサーとか、カメラとか…」
「いや…一人だ」
カツン…
「!…き、きたっ」
「しー…」
カツン…
「…」
「…」
息を潜める。
カツン…カツン…
足音が一番近くなって、止まった。
「…」
「…」
く、くる…っ
「やあ、アリス」
「ひぃぃっ!!?」
ひた、と肩に手を置かれ、私は飛び上がった。
「…だ…だだだ、誰よ…!!なにが目的なのよー!!」
「お、落ち着けアリス!!」
「いやーー!!」
ばしっ、どかっ。
猫の制止も聞かず、私は腕を振り回す。
「アリ、アリス、大変危ないです…!」
「!!」
その腕は、いとも簡単に捕まれる。
…もう…終わりだ…
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