おかしな国のアリス
「まぁまぁ、チェシャ猫。落ち着いてください。」
「ぁあ?てめぇはむかつかねぇのか?なめられてんだぞ?」
「僕は大人なので」
にこりと笑う。
「…では、道案内をお願いしましょうか…トランプ兵さん」
はい?
…今なんと?
「…いやはや、参りましたねぇ…」
ビルは、顔を右手で覆った。
その手をどけると
「トランプ…兵…」
「ふふ、バレてしまいましたか」
本当にトランプ兵だった。
なんで、ここに。
「人間、やろうと思えばなんでもできるんですねぇ。」
…人間なの?
まぁ、それはいいとして…
「よかった!」
それに対して
「…いいわけあるかちくしょう!」
猫が怒鳴る。
「俺はなぁ…俺はてめぇみたいなのが大っ嫌いなんだよ!」
ゼェゼェと肩で息をする猫。
「おや、嫌われてしまいましたね」
そんなことには怯まないトランプ兵。
猫は、なにが嫌なのかな…
「とにかく…てめぇには、てめぇらには頼らねぇ。
俺たちの誓いだ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺たちって…」
「先祖代々っつーことだよ。行くぞアリス」
「わっ、ま、待ってよ猫!」
私の声は届かず、猫はどんどん歩いていく。
振り返ると、トランプ兵が立ったまま笑んでいる。
その姿に、なにか冷たいものが背中を伝っていった。
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