【短】愛のひかり
「……ねえ、あたしの友達がね、お兄ちゃんのことカッコイイって言ってたよ」
夜中、彼が眠っているのかを知りたくて、よく話しかけてみたものだ。
「それは光栄だね」
彼からは必ず返事が返ってきた。嬉しかった。
「紫乃も友達とそういう話をするのか?」
「そういう話って?」
「男の子の話題とかさ」
「あたしはしないよ。聞いてるだけ」
「そう、よかった」
とびっきり優しい手に、髪を撫でてもらいながら眠る夜。
居場所という言葉の意味が
私にも少し分かったような気がしていた。
彼の愛情をたっぷりと受けながら3年が過ぎ、晴れて高校を卒業した。
18歳。
私はもう、リボンが結べなくて困ったり、髪を乾かさずに寝たりするような子どもではなかった。
ひとりの大人だった。
自分だけが、そう思っていた。
「紫乃は、本当にきれいになったね」
卒業式の日の夜、いつものように同じ部屋で眠っていたら、彼がそんなことを言った。