【短】愛のひかり
「初めて紫乃に会ったのは4年前だっけ?」
「うん、おばあちゃんの家のそばの、雑木林で」
「鳥を逃がしたと言って、ぐずぐず泣いてたね」
からかうような声で言われ、私は頬をふくらませた。
「あ、そんな顔しちゃ、せっかくの美人が台無しだろ」
「だってお兄ちゃんが意地悪言うから……」
「ごめんごめん。でも本当に、あの時の少女がこんなにもきれいに成長するなんて、すごく嬉しいんだ」
彼は隣の布団から手を伸ばし、私の前髪をかき上げながら言った。
「紫乃は、オレの理想の女性に育ってるよ」
「本当に?」
「ああ。もう子どもじゃない」
これまでにも何度となく彼が口にしてきた言葉。
だけどこの夜は、まったく違う意味を持っていた。
「……お兄ちゃん?」
急に真剣になった彼の瞳に問いかけると、次の瞬間には唇が触れていた。
自分よりもずっと大きな体が覆いかぶさり、視界から天井が追い払われた。
「紫乃」
聞いたこともない低い声で、名前を呼ぶ彼。
「やだっ……お兄ちゃん」
「好きだよ」
いつも私の髪を優しく撫でてくれた手と、今私を押さえつけているこの手が、同じものだとは思えなかった。
どっと涙が出た。
あまりにも、恐ろしくて。
――私に与えられた居場所とは、こういうことだったのだろうか?