【短】愛のひかり
そんな私の寂しい気持ちを慰めてくれたのは、数々の習い事だった。


料理教室をはじめ、外国語やアクセサリー作りまで。


そこには歳の近い主婦がたくさんいたし、何かに没頭する時間は楽しく充実していた。



「そういえば最近、松山さんを見ないわね」
 

習い事の後、いつものように主婦仲間とカフェでおしゃべりしていた時だ。


松山さんという、私と同じ年の女性が最近教室に顔を出さないことに気づき、その場にいたみんなに尋ねてみた。


「そうそう。実は彼女ね、妊娠したらしいのよ。
つわりがひどいらしくて、それでお休みしてるんですって」
 

松山さんと特に親しくしていた女性が言った。
 


妊娠、か……。

たしか、彼女はまだ結婚して間もないはずだ。



「そうだったの。羨ましいわ」
 

思わず出た素直な言葉。


だけどみんなはきょとんとした顔で、私を見た。



「え、何?」


「紫乃さんでも他人を羨ましいと思うことなんてあるのね」
 

当たり前のことを言われ、私は吹き出した。


「どうして? あるわよ」


「でも私たちから言わせれば、紫乃さんの方が何百倍も羨ましいけどな。
誰の目にも美人だし、何より旦那様が、ね?」


「うんうん。光さん、本当に素敵だもの」
 

驚く私をよそに、彼女たちは光の話題で盛り上がり始めた。

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