【短】愛のひかり
≪3≫
彼のいない、辛く長い日々が始まった。
せめて彼の愛が小さな命として残り、このお腹に宿ってくれれば。
ひそかにそんな期待もしたけれど、叶わなかった。
私が悲しみに打ちひしがれる毎日を、彼は、神戸でどんな風に過ごしているのだろう。
苦労はしていないか、体を壊していないか、心配は尽きなかった。
「大丈夫だよ。父さんの古くからの友人が、こっちにいるんだ。
近頃はその人にすごくお世話になってるから」
と、電話で彼が話していた。
毎日の電話。
それは、ふたりをつなぐ重要な橋だ。
それぞれの一日の報告と、変わらぬ愛を確認し合うわずかばかりの慰めの時間。
だけど電話を切った後はいつも、言い様のない寂しさに襲われた。
束の間の幸せが電波と共にぷつりと切れてしまうのを、何度味わっても慣れることができないのだ。
こんな気持ちになるくらいなら最初から声を聞かない方がマシ。
そう思い、携帯の電源を切ってしまったこともある。
でも、1分ともたなかった。
切ったそばから恋しくなり、再び電源を入れて着信を待った。
「オレがスキャンダルを起こしたせいで、紫乃に苦しい想いをさせてごめんな」
彼は電話でもたびたび謝った。
「ううん、いいの。怒ってないから」
「……紫乃は、やっぱり最高の妻だな」
違う、それは違うわ、光……。
迷子になった子どもが、親を恨んだりはしないでしょう?
ひたすら孤独と不安におびえて泣くだけでしょう?
光、今の私はそんな子供と同じなのよ。