【短】愛のひかり
はたと気づき鏡を見ると、ずいぶん痩せてしまった自分が映っていた。
顔色は悪く、泣いてばかりの瞳はどんよりと濁っている。
家の中は掃除こそ行き届いているものの、まるでドラマのセットのように作り物めいていて、温度が感じられない。
彼が私に守ってくれと言った、“ふたりの大切な場所”だとは思えなかった。
これじゃ、いけないんだ。
いつか彼が帰ってきたとき、以前と変わらず温かく迎えられる空間でなければ。
孤独につぶされないよう、自分の足でしっかりと立たなければ。
そう思うようになってからの私は、彼がいない寂しさを抱えながらも少しずつ前に進み始めた。
休みがちになっていた習い事に通い始め、外見や仕草にもいっそう気を配るようになった。
褒めてくれる彼はいなくても部屋には欠かさず花を飾った。
得意の料理にますますのめりこんでいったのも、この頃からだ。
最初は彼の理想の女性に近づきたくて通い始めた料理教室。
だけどいつしか自分自身が料理に夢中になっていた。
“彼のため”ではなく“自分のため”。
それは、私にとって初めての感覚だった。
熱心になるにつれ、料理教室の先生から褒められる機会も増えた。
中でもオリジナルレシピを褒められるのが一番嬉しかった。
料理の基本をマスターした私は、自分だけのオリジナルレシピを作るのに凝っていたのだ。