【短】愛のひかり
まさかこんなことが起きるなんて、考えてもなかった。
本来なら同じ孤独を味わうはずの3年間が、私と彼ではこんなにも違うものだったなんて。
「その人、オレが神戸でお世話になった人の娘で、明菜さんっていうんだ」
女性の名前を彼が口にしたとき、私はその声色から、確かな愛情と尊敬の念を感じ取った。
これまでの戯れとは違う。
特別な人なのだ。
言われなくても痛感する。
「その方は……今も神戸にいるの?」
「ああ。実家で育てるつもりらしい。……君には納得のいかない話だろうけど」
そこまで言って言葉を切り、目をふせる彼。
こんな風に口ごもる姿は見たことがなかった。
恐ろしいことを聞かされる予感に、私の鼓動は速さを増した。
「できればオレは、その子を認知したいと思ってるんだ」
認知――。
もうそんなところまで話が進んでいたなんて。
彼の腕に抱かれて聞くには、あまりにも残酷すぎる話だ。
「紫乃……」
「やめて! もう聞きたくない」
ベッドから逃げるように降りて、服を着た。
体が震えてうまく袖が通らない。
乱れた髪を整えることもせずに玄関を出る。
扉を開けると強い風が吹き込み、目にしみた。
後ろから彼の声が響いていた。
「紫乃! どこに行くんだよ!」
本当に……私はどこに行くつもりなのだろう。