【短】愛のひかり
認知なんかしないで、と言えば解決するの?
それともいっそ彼と別れれば、楽になれるの?
……どちらも私には選べない。
選択肢をいくつ並べられても、私が選ぶ道はいつだって決まっているのだから。
“彼のそばで、彼を愛し、愛され続けたい”。
それだけ。
「紫乃」
名前を呼ばれてハッとした。
目の前のショーウインドーに、彼の姿が映っていた。
肩で大きく息をして、顔を歪めている。
「ごめん、紫乃。オレ……本当にごめん」
彼は何度も謝りながら、深く頭を下げた。
いつも冷静で人一倍プライドが高い彼の、初めて見せる姿だった。
光……それは私のための行動?
それとも、守るべきもののために頭を下げているの?
答えは聞かなくてもわかっていた。
彼の固い決心を見せ付けられ、私は首を縦に振るしかなかった。
「赤ちゃんを……認知してあげて」
「紫乃」
パッと顔を上げて私を見つめる彼。
目が合った瞬間、こらえていた涙が出そうになり、私はまぶたに力を入れた。
「紫乃、本当にいいのか?」
「ええ。……生まれてくる命に罪はないものね」
やっと苦しみから解放されたように、彼の顔が遠慮がちに輝く。
「君ならそう言ってくれると信じてたよ。ありがとう」
その日、彼は朝まで私を離さなかった。
紫乃が好きだよ、と何度も耳元でささやきながら。