【短】愛のひかり
憂いを湛えた深いまなざしに、まず目を奪われた。

薄めの上品な唇は、不安を隠せず震えている。

艶を放つ黒髪も、清楚な花柄のワンピースも、きっと彼好み。
 

お揃いのワンピースを着た千絵ちゃんは、状況を理解できるはずもなく、傍らでキョロキョロと顔を動かしていた。


「遠くて疲れたでしょ? どうぞ、中へ」


そう言ってふたりを部屋に招き入れた。

最後に入ってきた彼と目が合い、そっと目配せするように微笑む。



お茶を出して落ち着いたところで、

「明菜と大事な話があるんだ」

と、彼が切り出した。


それが合図だった。

私は千絵ちゃんを連れ、隣の部屋に移った。


「どうしてこっちに来るの? ママは?」

「ママは今、大事なお話をしているの。だから少しの間ここで一緒に遊ぼうね」


用意していたお人形を差し出すと、千絵ちゃんはパッと顔を輝かせる。

子どもに縁がなかった私には新鮮な反応だ。


ああ……この子は、本当に光の子なんだ。


間近で千絵ちゃんを見つめていると、しみじみ感じる。


ちょっとした表情の合間に見せる、驚くほど彼に似た目つき。

仕草まで時々同じな気がした。


ずっと離れて暮らしていたのに、親子というのはそんなところまで似るのだろうか。

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