【短】愛のひかり
ふと見下ろすと、千絵が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
私は初めて会ったときのように、千絵を抱き上げた。
ずいぶん重くなったな、と改めて思った。
料理教室には、今でも毎週通っていた。
「今回の新レシピもいい出来ね、紫乃さん」
新しく考えたオリジナルのパスタに、先生が太鼓判を押してくれる。
「ソースとよく合ってるし、見た目もおしゃれだわ」
「ありがとうございます」
完成までなかなか苦労した一品だったので、褒められたことが嬉しかった。
ガレットでパスタをはさみ、ミルフィーユ風に盛り付けるというアイデアは、千絵が喜びそうな見た目を追求して生まれたものだ。
「ねえ。紫乃さんは独立とか考えないの?」
突然、先生はそんなことを言った。
「教室側の人間である私が言うのもおかしいけど。
紫乃さんの腕前は、充分プロとして通用するわよ」
「私が……独立ですか?」
「協力できることもあると思うし、考えといて」
想像したことすらなかった。
たしかに料理は私にとって、趣味の範囲を超えてやりがいのあるものだけど。
独立という響きはあまりにも、自分からはほど遠い気がする。
このことを夕食時にポロリともらしたら、意外なことに、私より彼が乗り気になった。
「いいじゃないか、それ。チャレンジしてみなよ」