【短】愛のひかり

やっと見つけた、私の生きがい。


ひとりの人間として輝ける道だ。


「私……やってみる」
 

その言葉を聞いた彼は、自分のことのように喜んでくれた。


「そっか! よかった!」

「ただね、ひとつだけ希望があるの」

「何?」

「場所は店舗を借りるんじゃなく、できれば自宅でやりたいの。千絵の面倒をおろそかにはしたくないから」

「そうか……その方がいいかもな。あ、でも無理はするなよ? 
オレに協力できることは、いくらでもするからさ」

「うん。ありがとう、光」

 

決心がつけば、あとは準備に取り掛かるだけだった。
 

長年通った料理教室の先生や、彼が以前勤めていた広告代理店の人たちが協力してくれて、思ったよりスムーズに事が進んだ。
 

一番大変だったのは、キッチンのリフォームだ。


大勢で使用できる大きなキッチンにするため、パンフレットを見比べたり業者に見積もりを頼んだり、やることが山積みだった。
 


疲れるけれど、決して嫌な疲労感ではない。


一日一日が充実して、確実に前に進んでいる手ごたえが楽しかった。




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