【短】愛のひかり
そしてとうとうオープンまで1ヶ月を切った冬。
千絵と暮らし始めて2度目の、お正月がやってきた。
とは言っても年明け早々、彼の仕事関係のパーティなどが続き、ゆっくりしている暇はない。
今日は日頃からお世話になっている人のお宅で新年会。
その間、彼の実家で千絵を見てもらうことになった。
新年会には私たち夫婦以外にも10人ほど集まっていて、みんな気心の知れた人ばかりなので楽しかった。
「そういえば千絵がいないのは久しぶりだよな」
お酒が入って上機嫌の彼が、ふと思い出したように言った。
「こうしていると新婚の頃に戻ったみたいだ」
いつもより饒舌な彼に付き合って、私も昔に思いを馳せる。
「あの頃はふたりとも、若かったわよね」
「それを言うなら、出会ったときなんかもっと若かったよ。君はまるっきり少女だった」
「そしてあなたは私の“お兄ちゃん”ね」
私たちは顔を見合わせ、クスクスと笑い合った。
今となってはすべてがなつかしい……。
彼に引き取られ東京にやってきたこと。
ふたつの布団を並べて眠った日々。
そして、心ごとこの身を奪われた夜のことも。
“オレが教えてあげるよ”
そんな言葉が口癖だった、あの頃の彼。
だけど何も知らない私に彼が教えてくれた恋は、いつも嫉妬や苦悩と隣り合わせだったんだ。