coconut
「私の方こそ…。耕輔の家の…
合鍵、返しにいかなくちゃだね。」

一緒に住めばいいのにと言われて
合鍵も自然に渡してくれた。

耕輔の家から私の家は
近くはなかったけれど…
ヒトリ暮らしの割に大きめの家で
掃除が大変だったのを思い出す。

一緒に住めばよかったのかな。

私は同棲というのが抵抗あって
合鍵は大事に持ったままだった。

耕輔の家にお邪魔する時も、
勝手に入るのもイヤだったから
必ず連絡を入れてからにした。

二人だけの空間で…
誰にも邪魔されないあの家が
大好きで居心地よかった。

私だけが居心地よかったの…?
私だけが幸せだったの…?

耕輔は幸せじゃなかったの?
ねぇ耕輔は…つらかった…?
だから別れを選んだの?

いろんな言葉が胸の中で
弾けて消えていく音も聞こえる。

ただ、涙を流さないようにした。
< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop