鉄の薔薇姫
みんな彼女に恋している
駐屯地は首都ガラタシャから馬で二里ほどの距離にあり、国境や港湾部に配備されている兵や、各都市の駐屯兵を除いた約4万人が生活をしている。
従って、調練場とは逆側に町が組織され、兵士相手に酒食や色を売る繁華街が栄えている。
たまにレンカはリゲルたちに連れられこうした場所に来るが、酒は付き合い、女は遠慮することにしている。
今日は酒だ。
「いやー、やっぱりいいな」
「訓練後の酒がか?隊長がか?」
「シア隊長に決まってんだろ」
麦酒をいっきに煽り、リゲルが言い切った。
レンカは微妙な居心地の悪さを感じながら話を聞いている。
「強いわ、美しいわ。マジで遊撃特殊やっててよかった」
「確かに、あの人の下ってのはイイよ。去年の出兵は凄まじかったよな」
去年の出兵とは、隣国である仇敵シナシ国との一戦だ。
シア率いる第一遊撃隊の活躍により、主力部隊に大損害を与えてから、この一年ほどは平穏が保たれている。