鉄の薔薇姫
「リルアムから旨い葡萄酒を貰ってな。おまえにも味あわせてやろうと思ったまでだ。
今日はもう呑んだんだろう。また別な機会に」


そこまで言って、レンカの表情に見える失望にシアが気付いたようだ。


「一杯、やっていくか?」


シアの言葉にレンカは力強く頷いた。


「どうだ、旨いか?」

レンカが葡萄酒を一口飲むなりシアが聞いた。
ゆっくりと飲み下し、レンカは答えた。


「俺はあまり酒の味がわかるほうではないですが、これは旨いと思います」


「そうか」


シアもまたグラスに注いだ葡萄酒を口に含む。
二人はベッドに並んで腰掛けている。


「今日は誰と飲んでいたんだ」


詮索するというよりは会話の一貫として、シアが聞いてきた。


「リゲルさんたちとです。町場に出てきました」


「連中、酒好きだからな。どれ、明日はみっちり鍛えてやろう。二日酔いとは言わせん」


楽しそうに聞こえてもいい内容だが、シアは笑いもしていない。
こうして共にいても、滅多に笑わない人なのだ。


「みな、隊長に恋していますよ。あなたを崇拝している」

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