鉄の薔薇姫
レンカは言った。

誰より恋していて崇拝しているのは自分だと、言葉に滲ませたつもりだ。

しかし、シアはそう言ったことは無視するのが常だ。
レンカもまた、はっきり口にすべきでないことはわかっている。


「優秀な戦士たちに好かれるのは嬉しく思うよ。おまえも含め全員がいつまでも私の下にいてくれれば助かるな」


「みな、そのつもりと思います」


「優秀なやつはみんな、近衛隊に引っ張られてしまう。まあ、近衛に入りたくて遊撃隊を志願してくるやつもいるがな。そういったやつに限って、いつまでも遊撃でうろちょろしているんだが」


後方部隊である帝下近衛隊は皇帝直属の部隊であり、前線に出てくるのは親征軍が興ったときのみだ。

特権階級的側面が強く、入隊資格は貴族の出身か、戦争で功績のあった者に限られている。

軍の中枢である隊本部の構成員もまた、近衛隊から横滑りで着任した者が多い。


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