鉄の薔薇姫
2章
密約のはじまり
帝国北東の小都市サハル。
そこで絹糸商人の三男坊として産まれたレンカには、端(はな)から兵士以外の将来はなかった。
一代で大商人に成り上がった父の施策ゆえだ。
長兄は跡継ぎ、次兄は幼い頃には市長の娘の許婚になっており、三男であるレンカは帝国軍人として国の礎となるべく教育された。
専門の教師につき、本格的に馬術と剣術を学び、学問も兵法も修めた。
16歳で受けた新兵試験に、貴族の子弟に混じりトップクラスの成績で合格したのは、環境からして当然の結果であった。
平民でつける一番のポジションが遊撃隊だったが、試験を見ていたリルアム統括隊長がシア・ラークス直属の遊撃特殊に抜擢してくれた。