鉄の薔薇姫
片恋
「次、来い!」
シアの声が草原に響き渡る。
声とともに遊撃隊の一名が剣を構えて進み出た。
空気が揺れるような気合いとともに斬りかかるが、あっさりとシアにいなされる。
本人がシアを見失った時には、首の真横にシアの切っ先が突きつけられているというわけだ。
「体の処理が遅い。次!」
本日の調練は剣技である。
騎馬兵には取り分け馬術ばかりが重視されがちだが、遊撃隊においては剣技、格闘術は必須である。
場合によっては、いつでも馬を降り、白兵戦に挑まなければならない。
シアを含め副隊長のパージと遊撃特殊から剣技優秀者が10名選抜され、一般兵を相手に模擬戦闘を行うのだ。
勿論、剣は模造刀であり、胴当て着用であるが、当たりどころが悪ければ骨折や昏倒もあり得る。
一般兵よりも指導者の方が苦しいだろうこの訓練。
本日もシア隊長はいきいきと剣を振るっている。