鉄の薔薇姫
(俺は代わりだ)


以来、レンカの頭の中ではその言葉が巡っている。


足が自然と隊長舎の方向へ向かう。

こんな時間に会いに行くわけにはいかない。
それでも、無性にシアに会いたかった。


隊長舎と一般隊舎をつなぐ通路の手前、第一武器庫を通りかかった時だ。

薄くドアが開いている。
不用心だとドアを閉めかけると、中から声が聞こえた。

シアの声だ。

ドサッという物音。

レンカは不安になり、ドアから中へ滑り込んだ。
奥の棚の前にシアが倒れているのが見えた。

正確には引き倒されている。
上にのしかかっているのは遊撃特殊の同僚・スルトだ。


レンカは緊急事態を悟り、一気に手足が熱くなった。

一足飛びにスルトに飛びかかろうとしたが、それより早くシアの拳がスルトの鳩尾にめり込んでいた。

うっと呻いてスルトが横に崩れた。
シアが颯爽と立ち上がる。

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