鉄の薔薇姫
そのままそれぞれの隊舎に戻るのも妙だったので、レンカとシアは渡り通路から外に出た。

守衛が立つポイントは避け、馬房や衛倉が並ぶ一角にやってくる。


「もしかすると助けてくれるつもりだったか?」


薄暗い敷地を、ぶらぶら歩く二人に行く宛てはない。

シアは男性兵士と同じ木綿のシャツとストレートのパンツ姿だ。
風呂上がりなのだろう。
ひとつにゆるくまとめられた髪は濡れている。

レンカは困って答える。


「出る幕がありませんでしたけど」


「それはすまなかったな」


そう言ってシアは遠くを見ている。
何を考えているかと思うと、レンカはたまらない気持ちになった。


「スルトのやつ……馬鹿ですよ。あんなこと……」


「おまえが気に病むな。私は自分が女であることをよく理解しているつもりだ。
鉄の薔薇姫なんてあだ名され、祭り上げられるのも、私が女だからこそ。実際、諸国は必要以上に私を恐れているらしい。万々歳じゃないか」


「でも」

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