鉄の薔薇姫
ガバのじいさんとは、恐れ多くも帝国軍前線部隊7万を統べる総司令隊長のことである。
ルーチェも歩兵隊大隊長の名だ。

権威とは無縁のシアは誰のことも好き勝手に呼ぶ。
言い換えれば好きに振る舞えるだけの実力があるということだ。


「生憎、下っ端なもんで」


リルアムはおどけて答える。


「まあ、いい。リルアム、暇なら飲みに行くぞ。レンカも連れて」


シアの言葉にぎょっとしたのはレンカだ。

統括隊長と隊長相手に飲むこと自体ストレスフルな宴だが、何より想い人と恋敵が仲睦まじく過ごすのを間近で見なければならない。

そんなのは地獄だ。


「そうしたいのは山々だが、陛下に呼ばれている」


「つまらないやつめ。じゃあな」


シアはぷいと顔をそむけ、二人を置いてスタスタと歩いていってしまう。

慌てて後を追おうとするレンカを、リルアムが呼び止めた。

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