鉄の薔薇姫

期待




出兵を近く控えたある日、レンカは調練後、隊長舎に呼ばれた。

今日の呼び出し相手はシアではない。

リルアム・ユースにより召集されたのは、50人あまりの遊撃隊兵士だった。


通常、軍議に使われる隊長舎広間には、正面の机にリルアム、その後ろに隊本部の腕章をつけた男が二人、さらに向かい合う形でレンカたち遊撃隊兵士がいた。

レンカの近くにはリゲルがいる。
他に遊撃特殊から3名ほど呼ばれている。


「今日、諸君を呼んだのには理由がある。ここに集められたは、馬術を別とし、格闘術、剣技、弓術の優秀者だ。五年前のハイランド海戦に従軍したものも含まれる」


リルアムが大音声で言った。

五年前のハイランド海戦とは、近隣諸国を荒らしまわっていた海賊船を、ハダ内海にて討伐した一戦である。

海軍を持たないハダ軍は、火矢を射かけ、小船で回り込み勝利した。


「きたる戦、シナシ国が我が内海に大隊を送り込むことは必定である。ハイランド海戦のようにはいくまい。

そこでだ、シナシ国の侵攻に対し、我が軍は新たに海兵軍を組織することとなった。指揮は皇弟・ベトルード殿下がとられる。シナシが舌を巻く大戦艦も造船済みだ。

諸君、その高い技能を新しい組織で活かす気はあるか。諸君の中から海兵となる者を募りたい」

< 38 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop