鉄の薔薇姫
「行くか?」


解散となった場でリゲルが寄ってきた。


「俺は……シア隊長の傍にいるつもりです」


レンカは答えた。リゲルが笑う。


「おまえも遊撃特殊らしくなってきたな。同感だ」


そうだ、あの人を置いてなんか行けない。
たとえ、あの人には自分など必要なくても、戦場で一矢、一太刀の楯になれるなら、それは彼女とある理由だ。


「レンカ・トラジェン」


リゲルとともに広間を出ようとするレンカを、またしてもリルアムが呼び止めた。

レンカはリゲルと別れ、リルアムのもとに駆け寄る。


「シアを頼むと言っておきながら、急な話ですまないな」


「いえ」


「おまえには言っておこう。海軍は陽動だ」


思わぬ言葉と、なぜそれを一兵士に言うのかという不審でレンカは眉をひそめた。


「シナシに乗る姿勢を見せるだけだ。シナシ軍本隊はウナイ山を越えてくるだろう。そちらは遊撃隊と騎馬兵で迎え撃つ」

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