鉄の薔薇姫
戦況は呆気なくハダ軍側に傾いた。

長が討たれたため、敗走を始める兵士たちが現れる。


「逃がすな!討ち取れ!」


シアが怒鳴る。

今頃、後続のシナシ軍本隊をハダ軍が包囲しているだろう。
逃走兵が多ければ、包囲からあぶれるため、先遣部隊は殲滅が肝要である。

しかし、シアの怒号は敵の心を挫くためでもあった。

レンカはシアに近付こうと手綱を引く。
自棄を起こした敵兵が彼女を害さないようにだ。


その時、レンカの真横に敵の騎馬が一騎。

レンカが気付いたときには、睨みつける敵兵がレンカ目掛けて突っ込んできた。

抜かった。

シアのことしか頭になかった。

殺られる。

レンカはその一瞬、敵兵の顔を食い入るように見つめた。


すると、飛び込んできた何かが敵兵にぶつかった。

敵の刃がレンカに振りおろされるより早いのだから、尋常でないスピードだった。

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