鉄の薔薇姫
「勝手を申し上げましてすみません」


「いや、私も甘えを捨てる機会だ」


連れ立って馬を進めながら、シアがひとりごとのように言う。

レンカには彼女が甘えていたようには見えたことはなかった。
しかし、二人で過ごした7ヶ月間が少しでも彼女の心の慰めになったならいいと願う。

それから、いくらか間があり、先の答えを告げなかったシアがあらためて口を開いた。


「楽しみに、待ってる」


え?

レンカはそれが何の返答か判じえず、間抜けにも聞き返してしまった。
すぐに理解して、ぶんと勢いよく真横を向く。

シアは前を向き、すでに白い面をして無表情だ。

レンカがいつまでも見つめていると、シアが怒ったように唇を開いた。


「二度は言わんぞ」


「はい、すみません」


レンカは謝りながら、自分の口元が緩んでしまうのを感じた。


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