黒蝶
真琴の手当が終わったというので椿の部屋に行った。

「入るぞ…」

恭弥の声に反応するように起きた。

「…」

「ごめん、起こしたか?」

椿は声を出さなかった。
いや、出せなかったのだ。
椿はただただ首を降った

「椿…お前の本名なんて言うんだ?」

「…」

椿は黙り込んだ。
どこの誰かも知らない人に名前を言えなかった。
それは、小さい時に教えこまれたからだ。

「そっか、言えないのか。心配すんな。お前を捨てたりはしない。」

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