月の絆~最初で最後の運命のあなた~



[5]

 正直、店の外観と聖呀の見た目から、ケーキの味とかには期待していなかった。


 なのに――。


「美味しい!!」


「ここのケーキは、あいつの彼女でもあるパティシエが作っているからな。今日はいないみたいだけど……」


 なんて言いながら、狼呀はケーキを食べるあたしをずっとつめてくる。


 静かな個室にはピアノの美しい調べが流れ、目の前にはあたしが伴侶だとか言うイケメン。そのせいで、かなり食べづらい。


 よっぽど、質問攻めにあったほうが気楽に食べられると思う。


「ねえ、何か聞きたくて連れて来たんじゃないの?」


「そうだが……」


「だったら、質問でもしたら?」


「別に食べ終わってから、ゆっくり」


「食べてる間、ずっと見られてたら落ち着かないから言ってんの!」


 あたしはフォークを置いた。




< 131 / 356 >

この作品をシェア

pagetop