月の絆~最初で最後の運命のあなた~
[5]
正直、店の外観と聖呀の見た目から、ケーキの味とかには期待していなかった。
なのに――。
「美味しい!!」
「ここのケーキは、あいつの彼女でもあるパティシエが作っているからな。今日はいないみたいだけど……」
なんて言いながら、狼呀はケーキを食べるあたしをずっとつめてくる。
静かな個室にはピアノの美しい調べが流れ、目の前にはあたしが伴侶だとか言うイケメン。そのせいで、かなり食べづらい。
よっぽど、質問攻めにあったほうが気楽に食べられると思う。
「ねえ、何か聞きたくて連れて来たんじゃないの?」
「そうだが……」
「だったら、質問でもしたら?」
「別に食べ終わってから、ゆっくり」
「食べてる間、ずっと見られてたら落ち着かないから言ってんの!」
あたしはフォークを置いた。