月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「青は晴れた日の空と静かな海みたいだし、緑は森にいる気分になれるから好き」
この個室は、人の気配がしないのは好ましい場所だけど、白い壁に囲まれていると落ち着かなくなってくる。
自然と指で机を叩いていると、その様子を眺めていた狼呀が片方の眉を上げた。
「好きな食べ物は?」
「ああー、肉料理とじゃがいも。あと、スイートポテトとか甘い物」
あたしは、にっこりと笑ってケーキを一口食べた。
この甘さが幸せすぎる。
外はとろけるようなチョコでコーティングされていて、中はムースとチョコクリーム。
思わず、もったいなくてちまちま食べてしまう。
そんなあたしを見ていた狼呀が口を開いた。
「もう一つ、ケーキを持ってくるか?」
「いい。一個だから、より美味しく感じるんだと思う。だけど、聞いてくれてありがとう」
優しくて、気が利くのはかなりいい。ポイントを一点獲得!
でも、油断は出来ないと思う。
顔が良くて、スタイルが良くて、優しいなんて全て揃ったような男がいるなんて、夢物語にも等しい。
あっという間に、マイナス点になるのはわかりきってる。
なのに、あたしの心というか魂が、素直に彼を見てみろと体の奥で暴れはじめた。