月の絆~最初で最後の運命のあなた~




「好きな場所とか行きたい場所は?」


 あたしの葛藤に気づかないで質問を続けてきたけど、嫌な気はしない。


「自然が多い場所。山が見えて、走れるような土があって、緑が多かったり……とにかく人が少ない場所が好き」


 特に、ここ最近は森や土の匂いが恋しくてしょうがない。


 誰に話しても、理解されないあたしの深い欲求だ。


 唯一、家族は理解してくれるけど、きっと狼呀には理解出来ない。


 残念な気分になりながら、あたしはケーキをまた一口食べた。


「そろそろ、中級あたりの質問にしようかな」


「ふーん、もう小学生みたいな質問は終わり?」


 狼呀は、にんまりと笑った。


 ちょっと獣を連想させるような笑みだ。悪そうで、魅力的で、野性味溢れている感じ。


「そうだな。次は高校生くらいの質問だな。恋愛経験は?」


「ぶはっ!」


 思わずむせてしまった。


 この質問が中級?


 確かに高校生は――そんな会話をする。


 だからって、初対面にも近い相手に聞く内容かと言いたいけど、やめておいた。






< 134 / 356 >

この作品をシェア

pagetop