月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「好きな場所とか行きたい場所は?」
あたしの葛藤に気づかないで質問を続けてきたけど、嫌な気はしない。
「自然が多い場所。山が見えて、走れるような土があって、緑が多かったり……とにかく人が少ない場所が好き」
特に、ここ最近は森や土の匂いが恋しくてしょうがない。
誰に話しても、理解されないあたしの深い欲求だ。
唯一、家族は理解してくれるけど、きっと狼呀には理解出来ない。
残念な気分になりながら、あたしはケーキをまた一口食べた。
「そろそろ、中級あたりの質問にしようかな」
「ふーん、もう小学生みたいな質問は終わり?」
狼呀は、にんまりと笑った。
ちょっと獣を連想させるような笑みだ。悪そうで、魅力的で、野性味溢れている感じ。
「そうだな。次は高校生くらいの質問だな。恋愛経験は?」
「ぶはっ!」
思わずむせてしまった。
この質問が中級?
確かに高校生は――そんな会話をする。
だからって、初対面にも近い相手に聞く内容かと言いたいけど、やめておいた。