月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「それで、恋愛経験は?」
「……答えなくちゃいけないの?」
「答えたくない理由でも? 答えないなら、悪い方に想像するけど」
「分かったわよ! 答える」
すでに、悪い想像をしていそうな狼呀を遮った。
二十歳にもなって、まだ恋愛した事がないなんて言いたくないけど、変な想像もされたくない。
なんとなく落ち着かなくて、あたしはスプーンでコーヒーをかき混ぜた。
「…………ないわよ」
「んっ?」
声が小さすぎると言いたいのか、狼呀は耳に手を当てて顔を寄せてくる。無視を決め込もうかと思ったけれど、狼呀の目の奥が悪戯にキラリと輝いていてやめた。
「あーもう! 恋愛経験はありません。これでいい?」
「ああ、最高だよ」
狼呀は、本当に嬉しそうに笑った。