月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「マリア、マリア!」
ぼんやりと考え事をしていたせいか、目の前で狼呀が手を振っていたことに気がつかなかった。
「ああ、何?」
「質問、続けてもいいか?」
なぜ、そんなにも知りたい事があるのだろう。
あたしは正直いって知りたいと思われるようなタイプじゃない。
普通の男が興味を持つのは、軽くて愛嬌があって、スカートを穿くような細くて女らしい子だ。
それに比べてあたしは、堅苦しくて、愛想がなくて、女らしさの欠片もない。
でも、狼呀の目に騙したり、嘘をついているような様子はなかった。
「失礼じゃない内容ならね」
「オーケー。なら、家族は何人いる?」
予想外に普通の質問をされて、身構えていたあたしは、肩透かしをくらった気分だった。
「五人家族。父と母、祖母がいて五つ上の兄がいる」
「家族は好きか?」
あまりにも当たり前の事を聞かれて驚いた。