月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「行こうか、マリア」
財布をジーンズの後ろポケットにしまいながら、狼呀はあたしの腰に手を置いて車まで導いた。
でも、あたしは車に乗る気はない。
「別に、すぐそこだから歩いて帰るよ」
「ダメだ」
「どうして?」
「遠足と一緒だよ。家に着くまでが、デートだろ?」
「……いや、それはないでしょ。通学路デートじゃあるまいし」
学生の頃なら、漫画や青春ドラマを見て密かに憧れていた。
でも、中学生の頃も高校生の頃も、あたしにそんな経験をする機会はなかった。