月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「時々、自分でも嫌になるよ。一人の女に落ち着けないところはさ」
「大丈夫だ。お前にも伴侶が見つかれば、そんな悩みもなくなる」
そう言って、狼呀は立ち上がった。
目の端に入った時計が、午前九時三十分をさしていたのだ。
「マリアとの約束があるから、出かけてくる」
キッチンでカップをすすぎ、棚に戻してリビングを出ようとすると、小さな呟きが聞こえてきた。
「オレはもう……出逢えないさ」
聞こえてきた声が、あまりにも弱々しすぎてリビングに戻って、声をかける気にはなれなかった。