月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「ごめん、停めて!」
とつぜん大きな声を出したあたしに驚きながらも、狼呀は車を停めてくれた。
すぐにシートベルトを外して、ドアを開けて飛び出す。
あたしの視線の先――駆け寄った先には、玄関にもたれるようにして、一人の男が座り込んでいた。
階段部分には点々と血がつき、男の目元は腫れて口元には血がついている。
あたしは、コンクリートに膝を着いた。
すぐ後ろに、狼呀の存在を感じる。
「誰だ、こいつ」
彼の言葉は、どこか刃物を思わせるくらい鋭い。