月の絆~最初で最後の運命のあなた~
あたしを伴侶だと思う人狼だから、知らない男があたしの家にいるのが気に入らないのかも。
たとえ、まだ家の中じゃなくて、敷地内だとしても。
「これは……一応、兄よ」
彼がこれ以上、獰猛にならないうちに教えて、ポケットから鍵を取り出して扉を開けた。
両手を引っ張って家の中に入れるつもりだったけど、あっさりと肩に担ぎ上げた狼呀が運んでくれる。
「そこのソファーに置いといて」
思わず荷物みたいに言うあたしを咎めることなく、彼はソファーに兄を寝かせた。
棚から救急箱を取りながら、思わず大きなため息が出る。今日は、両親が帰ってこれなくて良かったとしか思えない。
せっかくの気晴らし旅行なのに、こんな状態を見たら意味がなくなってしまう。