月の絆~最初で最後の運命のあなた~
無言で去っていく。
自分で望んだ事なのに、戻って来てほしいと思う自分がいる。
温かい腕の中に包み込まれたい。
きっと、ほっとできて不安なんて感じなくてすむ。
そこまで考えてると、呻き声が聞こえてきた。
振り返って救急箱を手にソファーに近付くと、兄の昴が顔を歪めている。
「何があったの?」
「…………」
昴は、何も言わない。
血が出て、腫れた顔を見ていると、心配よりも苛立ちがわいてくる。
あたしは、救急箱を近くに置くと、リビングを出て自分の部屋に向かった。