月の絆~最初で最後の運命のあなた~




 無言で去っていく。


 自分で望んだ事なのに、戻って来てほしいと思う自分がいる。


 温かい腕の中に包み込まれたい。


 きっと、ほっとできて不安なんて感じなくてすむ。


 そこまで考えてると、呻き声が聞こえてきた。


 振り返って救急箱を手にソファーに近付くと、兄の昴が顔を歪めている。


「何があったの?」


「…………」


 昴は、何も言わない。


 血が出て、腫れた顔を見ていると、心配よりも苛立ちがわいてくる。


 あたしは、救急箱を近くに置くと、リビングを出て自分の部屋に向かった。



< 218 / 356 >

この作品をシェア

pagetop