月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「はい、もしもし」
「ああ、良かった。もしかしたら、まだ寝てるかと思ったよ」
吸血鬼にしては、朝に元気な声でレンは答えた。
「いつもは寝てる。だけど、あんなに何回も鳴らされたら、誰だって起きるでしょうが!」
「悪かったよ。ちょっと、急な予定が入ってね。今日は撮影があるんだ」
「へえー、それがどうしたの? 綺麗な女の子たちに、囲まれて来ますって報告? べつに恋人じゃないんだから、お好きにどうぞ」
電話の事じゃなくて、ほっとしながらも、そんなくだらない事で朝も早く起こされたのかと思うと、苛立った。
「たしかに、綺麗で可愛い女の子たちには囲まれるよ? でも、そんな報告のために電話なんてしないよ。用件は……」
「用件は何? 手短にね。朝はあたし……」
そこまで言って、あたしは思い出した。
昨日から、両親は一週間の旅行で帰って来ない。
忙しい事は、何一つなかった。